【物語×AIイラスト】席替え

教室

鈴木「ヒャッハー! 今日は待ちに待った席替えだぜ!」

鈴木「今日の運勢は最強だった俺に死角はない! くじ引きが楽しみだぜ」

鈴木には、佐藤さんという気になる少女がいた。

佐藤さん

佐藤さんはとても優しい。

鈴木が、クラス全員分の給食のご飯ケースを、誤って窓から落としてしまった時、ただ一人だけ慰めてくれたのだ。

鈴木は佐藤さんの隣の席になりたいのだ。

昼休みが終わり、席替えの時間になった。

先生が指揮をとる。

先生「皆席に着いたかー? 席替え始めるよー?」

先生

鈴木はくじ引きが待ち遠しすぎて、泡を吹きそうだった。

先生「今回は、お前たちに良かれと思って、俺の独断と偏見で作った最強の座席表に従って、席替えを行ってもらうぞ」

鈴木「え?」

ガタガタガタガタ

席替えが終わった。

鈴木は泡を吹いていた。

鈴木「グエェェェ」

なぜなら、鈴木は教室前方の入り口横の席に位置するのに対し、佐藤さんは最後尾の窓際であったからだ。

つまり、両者は教室内の最も遠い席どうしに割り当てられたのである。

佐藤さん「あれ、鈴木君どうしたの?グエエエってなってるよ」

佐藤さん

鈴木は佐藤さんに心配の言葉をかけられたが、意識を失っていた。

ー1カ月後ー

教室

鈴木はやっと待ち望む日を迎えることができた。

この一か月は修行の記憶しかない。

毎日下校後、近所の山の頂にある神社にお参りに行き、沿岸にそびえたつモアイ像の前で毎日合掌した。

鈴木「この1カ月の修行、無駄にはさせないぜ」

先生「お前らー、席替えの時間だぞー」

先生「今日はお前達に良かれと思って、徹夜してあみだくじを作ってきた。喜ぶがいい」ゼハハハ

先生

鈴木は緊張のあまり、教室内で爆音で叫んでしまった。

鈴木「ファァァァアアアーーーーー!!!!!」

あみだくじは滞りなく行われ、席替えが実施される。

ガタガタガタガタ

鈴木はうれしさのあまり、気づくと叫んでいた。

鈴木は最前列で佐藤さんと隣の席になれたのだ。

鈴木は生まれて以来、最もうれしい瞬間に立ち会っていたのである。

しかし、問題はこの後のことだった。

全員が席に着いた後、最終的な座席の最適化が行われたのである。

それは、視力の悪い人との座席トレード交渉である。

佐藤さんは優しいので、即座に手を上げ、視力が悪い早乙女と席を交代してあげたのだ。

早乙女「鈴木君、佐藤さんに代わって、僕になったよ。最強の1カ月にしようね」

早乙女

鈴木の幸福は3分で崩壊した。

鈴木はひと月ぶりに泡を吹いていた。

鈴木「グォォォォ」

佐藤さん「鈴木君、どうしたの? グォォォってなってるよ」

佐藤さん

鈴木には、佐藤さんの声は届いていなかった。

結局、鈴木と佐藤さんはまたしても、最も遠い座席同士になったのだった。

ー1カ月後ー

教室

先月のこともあり、鈴木は1カ月何もしなかった。

1カ月間、ぼーっと佐藤さんを見ていただけだ。席替えに期待することは既に諦めていた。

2か月前の勢いはどこへ行ったのだろうか。

早乙女が毎日のように話しかけてきたが、何も記憶にない。

先生「おまえらー、席替えするぞー」

先生

先生「今回は、かつてない新しい方法を採用するぞ」

鈴木は最早、何も反応しなくなっていた。

先生「女子によるドラフト制度を行うとする。女子はそれぞれ隣にいてほしい男子を指名するのだ」

生徒たちは動揺する。

ザワザワザワ

全員に動揺はあったが、滞りなく席決めは終わった。

肝心の鈴木はというと、佐藤さんの隣になったのである。

ガタガタガタ

席替えが終わる。

佐藤さん「鈴木君、よろしくね!」

佐藤さん

鈴木は何が何だかわからなかったが、結果として、佐藤さんの隣になれたことが嬉しかった。

嬉しさのあまり、久しぶりに変な声を漏らす。

鈴木「オホーーーーーー」

佐藤さん「私、鈴木君のことがずっと気になってたんだ」

佐藤さん

理由は教えてくれなかったが、鈴木は佐藤さんの隣で、とても幸せな1カ月を過ごすことができた。

エピローグ

放課後、佐藤さんは一人教室に残っていた。

佐藤さん「はぁ~、今日も楽しかったな~」

佐藤さん「鈴木君って、毎日見ていて飽きないわ」

佐藤さん「なぜなら……」

教室

佐藤さん

佐藤さん「 私、鈴木君の右肩に見える守護霊のことが、気になって仕方ないのだもん」